犬本番猫支度

Simple and Clean

美人の才能と精神力

才能がある人はその才能を生かすように生きるべきだ、と才能がある人に仕向けてしまうのはハラスメントなのかもしれないなと思う。

すらっとした美人さんに「モデルや女優になったらいいのに! なんで目指さないの?」と言ってしまった。お世辞じゃなくて、もし目指したら本当になれるルックスだったし、なりたくて目指している人は大勢いる職業だ。褒め言葉の延長線上だと思ってついそんな言葉が口を突いてしまった。

言ってしまってから、それってたくさんの人から言われ続けていることだろうし、きっとうんざりさせてしまっただろうなと後悔した。誰もがモデルや女優を目指したいわけじゃないし、目指してみたけれど挫折してしまった過去があるのかもしれなかった。見た目で判断されてしまう苦痛は美人にも絶対ある。容姿の才能をもてはやしたかった勢いで、その人の生き方に土足で踏み込んでしまったことに気付いた。大きなお世話だよな。

「かわいいからアイドルになれるよ」「足がはやいからスポーツ選手になれるよ」「かしこいね、将来はお医者さんだね」と、子供の才能を褒めながら、将来の夢を侵食していく言葉がある。本気で将来そうなって欲しいと思って声をかけることはあまりないだろうし、子供を褒めるときの決まり文句みたいなものなんだろう。でも、そう言われ続けることで、得意なことを将来の目標にするのが当然なんだと、少しずつ心に刷り込まれてしまうことはあると思う。私はそうだった。私は自分に何の才能があるのかを考え続けながら育っていった。

働くようになり私の人生の先が見えたころにふと、私はここに至るまで自分のやりたいことに従って進路を一度も決めなかったことに気付いた。自分の経験を分析して、自分に向いていそうなものを選び続けた結果、たまたま私は今の場所に流れ着いているのだった。この場所に私の意思はない、そう思えた。ここまで「自分さがし」をする必要なく、それなりの生活ができる立場に収まることができたのは鈍感の賜物だったけど、かわいいけどアイドルを目指さない女の子の気持ちも理解できる感受性も私は身に付けていた。私は退職した。

誰もが分かる「美人」という才能に甘えずに、自分のやりたいことをやってるって間違いなくかっこいい。外から人生に口出しされ続けても、自分のやりたいことを貫き通すのは相当の精神力が必要だ。美人が愛想無いって言われる原因がわかった気がしたよ! 覚悟が感じられる生き方には、どうしたって憧れてしまう。